アートディレクターになるには?仕事内容や年収からデザイナーとの違いまで解説!
アートディレクターとは?
アートディレクターとは、直訳するとアート(美術や芸術)をディレクション(指揮)する人を指す言葉です。「Art Director」を略して「AD(エー・ディー)」と呼ぶこともあります。具体的には、広告やWebサイト、ゲーム、印刷物などの制作物のビジュアル面をすべて取り仕切る総責任者のことです。
アートディレクターの役割
アートディレクターは、さまざまな業界に存在する職業です。業界によって役割は若干異なります。
ゲーム業界
ゲーム業界では、必ずしもアートディレクターがいるとは限りません。やや大きめのプロジェクトの場合にいることが多くなっています。ゲーム業界でのアートディレクターの役割はプロジェクトによってさまざまですが、ゲームの世界観をどのようにデザインで表現するかを総合的に演出することが役割となります。
広告業界
広告業界でのアートディレクターは、一言でいえば、クライアントの要望を目に見える形にしていく仕事です。広告やCMはもちろん、ロゴや店舗デザインなど、今ではアートディレクターの仕事領域は広がっています。
デザイン業界
デザイン業界には、プロダクトデザインやエディトリアルデザインなどがあります。そのなかで、アートディレクターはデザイン面を取りまとめる役割です。デザインの方向性から、どのスタッフに依頼するかなどもアートディレクターが決めます。
アートディレクターとクリエイティブディレクター、デザイナーの違い
広告・デザイン・ゲームなどのビジュアルデザイン制作を指揮する責任者がアートディレクターです。
このアートディレクターと混同されがちな職業として、クリエイティブディレクターやデザイナーがあります。それぞれ、アートディレクターと比較した場合、どのような違いがあるのでしょうか?
アートディレクターとクリエイティブディレクターの違いは?
クリエイティブディレクターとは、アート制作全般の監督・管理を担う仕事です。一般的な認識では、アートディレクターの上司に当たるポジションになります。
広告業界やIT業界を活躍の主戦場としており、制作するアートの企画・立案をはじめ、作品のクオリティ管理、プロジェクトの進行管理や予算管理、チームのマネジメントなど、制作全般の流れを執り仕切る現場の総責任者です。そのため、ビジュアルデザインの制作のみに特化・指揮するアートディレクターとは、統括する業務の範囲が大きく異なります。
ただし、企業やプロジェクトなどによっては、アートディレクターと称され、同義で扱われるケースも少なくありません。
アートディレクターとデザイナーの違いは?
デザイナーは、実際にデザインの考案・制作を担当する仕事です。具体的には「Illustrator」「Photoshop」といったソフトウェアスキル、レイアウトや色彩、タイポグラフィーなどのデザインスキルを駆使し、作品を作り上げていきます。
一般的な認識では、アートディレクターの部下に当たるポジションです。制作現場では、クリエイティブディレクターやアートディレクターの指示を受け、作業に取りかかることになります。そのため、デザイナーには、指示内容を正しく把握する傾聴力、理解力、表現力が不可欠です。
アートディレクターの仕事内容とは
アートディレクターの主な仕事内容をご紹介します。
クライアントとの打ち合わせ
クライアントに依頼内容をヒアリングし、企画やデザイン、プロジェクトの方向性を固めます。
チームの編成
企画やデザイン、プロジェクトの方向性にあわせて、プランナーやデザイナー、コピーライターなどのクリエイターを選び、チームを編成します。
ラフ案作成・企画~デザイン決定
チームやクライアントと方向性や世界観を固めていくため、「カンプ」ともいわれるラフ案(頭の中に思い描いた完成図を大まかに見える形にしたイメージ概略図)をいくつか作成します。ラフ案は、アートディレクター本人が作成することもあれば、アートディレクターがデザイナーに指示して作成する場合もあります。
制作作業
スタッフやクライアントに、ラフ案を共有しながら企画コンセプトやプロジェクトの方向性を決定し、制作を進めていきます。その後、できあがりをチェックし、企画コンセプトに合っているかどうかの確認や、修正指示を出します。
コスト管理・スケジュール調整
プロジェクトのコスト管理を行ったり、リリース日までの各セクションのスケジュール管理・調整もアートディレクターの仕事です。
アートディレクターになるには?
アートディレクターになるには、まずはグラフィックデザイナーを目指すのが王道です。
そのためのルートを紹介します。
専門学校に通う
アート系の専門学校にあるデザイン学科やデザインコースでデザインを学ぶのが1つ目の方法です。専門学校では、コンピュータ・グラフィックやデザインの基本的な知識はもちろんのこと、デザインに関するソフトウェアの使い方やスキルも磨けます。
美術・工業系大学に進学
2つ目のルートは、美術系や工学系の大学に進学し、グラフィックデザインやデジタル技術を学ぶ方法です。グラフィックデザイン以外のことも学べるのが大学進学のメリットですが、最低4年は通わなければならないこと、専門学校よりも専門性に欠けるところが難点かもしれません。
独学でデザインを学び、デザイナーとして企業に就職
独学でグラフィックデザインを学び、企業に就職するルートもあります。独学のメリットは得意分野を磨けること、費用がかからないことです。一方デメリットは、わからない部分について相談できる人がいない、モチベーションを保つのが難しいこともある、就職試験にパスできるかわからないなどがあげられます。
デザイナーからアートディレクターになるためのポイント
デザイナーからアートディレクターを目指すためには、グラフィックデザイナーやWebデザイナーなど、数多くの制作現場を経験し、実績を積むことが重要なポイントです。アート制作における実務的な技術や知識を習得しておかなければ、制作現場を執り仕切り、デザイナーに指示を出すアートディレクターにはなれません。
また、デザイン制作のみにとどまらず、作品の企画・立案・品質保全、プロジェクトの進行管理など、担当する業務の範囲を拡張していくことも、アートディレクターになるためのポイントになってきます。
さらに、クライアントや外注業者との打ち合わせ、プロジェクトに携わる各スタッフのマネジメントなどにも、積極的に関わる姿勢を見せることです。
アートディレクターに必要なスキル
ここではアートディレクターに求められるスキルを解説します。
デザインの知識
アートディレクターは制作物のビジュアルを総合演出する仕事です。そのため、デザインの知識が必要不可欠です。また、デザイナーに指示を出す際、的確に内容を伝えるためにも、デザインセンス・知識は必須です。
ディレクションスキル
アートディレクターという名前のとおり、ディレクションがメインの仕事となるため、高いディレクションスキルを持っていく必要があります。スタッフへの指示出しやチェック、チームをひとつにまとめ上げる管理者としてのスキルが求められます。
コミュニケーションスキル
アートディレクターは、クライアントやプロジェクトに関わるスタッフなど、多くの人と連携しながらひとつの作品を作り上げていきます。何度も打ち合わせややりとりを行うため、コミュニケーションスキルは必須です。また、相手の要望を汲み取り具現化する理解力や企画力、さらにはデザインに落とし込む能力も必要とされる場面が多い仕事です。
アートディレクターになるために必要な資格とは?
アートディレクターになるために、特別な資格は必要ありません。ただし、次に紹介するような資格を取得しておくと、就職やキャリアアップに有利です。
・アドビ認定アソシエイト(ACA)
・Photoshop®クリエイター能力認定試験
・Illustrator®クリエイター能力認定試験
アートディレクターの仕事の大変なこと
華やかに見えるアートディレクターというクリエイティブな職業。しかし、仕事である以上、アートディレクターならではのつらさもあります。
具体的には、どのような苦労があるのでしょうか?ここでは、アートディレクターの仕事における大変なことをご紹介します。
大変なこと①マルチな知識・技術・経験が必要
制作チームのデザイナーに指示を出し、現場の指揮を執るアートディレクターは、当然のことながら平均的なデザイナーよりも高度な実務的スキルが求められます。
また、ビジュアルデザインの全般的な造詣も不可欠な要素です。さらに、プロジェクトの進行・品質・予算を管理する能力、クライアントや外注業者などとの折衝や打合せ時に発揮するコミュニケーションスキルなども欠かせません。
このように、マルチで多角的な知識・技術・経験を必要とされることが、アートディレクターの仕事において大変な点といえるでしょう。
大変なこと②スタッフのマネジメント
基本的にデザインの制作現場では、複数のデザイナーが関わります。プロジェクトの現場責任者にあたるアートディレクターは、企画・立案された作品を納期までに完成させるため、チームのデザイナーを上手にまとめなければなりません。
しかし、強い信念やこだわり、価値観を持つスタッフのマネジメントは、想像以上に大変な仕事です。
それぞれのスタッフに割り振る適切な業務の分担をはじめ、進捗確認や修正依頼、勤怠管理やメンタルケアなど、その仕事は多岐にわたります。企業やプロジェクトの体制次第では、コピーライターやカメラマンなど、デザイナー以外のクリエイターに対する指示や業務管理を担うケースも少なくないようです。
大変なこと③クライアントや消費者からの重圧
アートディレクターにとって、クライアントの要望を具現化することが最重要課題です。
近年消費者のニーズは、多様化や細分化する傾向にあります。そんな消費者の購買意欲を刺激し、クライアントを納得させるデザインを制作するためには、これまで以上のインパクトやアプローチ力に加え、他社との差別化を図る独自性・専門性・柔軟性が欠かせません。
実際に、クライアントからの要望は、年々難易度が増しています。また、SNSでダイレクトに評価してくる消費者の反応も、アートディレクターの大きな重圧となっているようです。
アートディレクターのキャリアステップと年収イメージ
アートディレクターはいきなりなれる職業ではありません。多くの場合グラフィックデザイナーからキャリアをスタートします。
1〜4年目:グラフィックデザイナー
5〜6年目:チーフデザイナー
7〜10年目:アートディレクター
アートディレクターの仕事の将来性
近年の広告市場は、テレビ・新聞・雑誌からインターネットに移行しています。実際、インターネット広告費は4年連続で2桁規模の倍増です。この点を踏まえた場合、今後アートディレクターの主戦場がWEBになることは、ほぼ間違いないといえるでしょう。
そのため、よりWEB上のデザイン制作に対する知識・技術・経験を積み重ねていくことが、将来性のあるアートディレクターとなれるのです。とはいえ、テレビ・新聞・雑誌での広告も完全になくなるわけではありません。どの媒体でも対応できる臨機応変なスキルを身につければ、将来が明るい職業のひとつです。
目指せ!アートディレクター
アートディレクターは、制作物のビジュアルを取り仕切る責任者で、さまざまな業界で活躍できる仕事です。ただし、デザインセンスに加えて、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルなど、高い能力が求められます。
まずはデザイナーとして経験を積み、実力をつけてアートディレクターを目指しましょう。
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