こんにちは。
バンタンゲームアカデミーです(^0^)
今回は株式会社スクウェア・エニックスより、キャラクターデザイナー豊田洋輔様をお招きしました。
今回の講演会では、Aiming様と共同開発『ゲシュタルト・オーディン』を例にアイデアを生み出す方法について教えていただきます。
<アイデアとは?>
「アイデアには、大きく分けて2種類あると思っています。まったく何もないゼロから作るアイデアと、要件に合わせて作るアイデアです」
「『ゲシュタルト・オーディン』はスクウェア・エニックスとAimingが共同開発で作った大型スマートフォンRPGです。
当初、Aimingが得意なMMO-RPGで、という以外は何も決まっていませんでした」
<コンセプトアートにおけるアイデア>
「ヒットゲームを作ろうとスタートしました。方向性を決めていく工程で必要になるのが『コンセプトアート』。
コンセプトは商品としての魅力が伝えるもので、これがブレるとアウトプットもブレてしまいます。コンセプトアートをもとにゲームイメージをチームで共有します」
おぼろげながら、現代ファンタジー、東京、異世界の世界観といったアイデアがまとまり、プリプロ(ゲームの雛形)を完成させたそう。
<そもそも、キャラデザとは?>
「キャラクターを作るというのは、すなわち命を作ること。ユーザーがいちばん最初に見るところでゲームの顔です。
この仕事が実はいちばん苦労しました。大枠のシナリオがなかったんです。プレイヤーの目的についても意見がまとまりませんでした。
僕はひたすらラフを描いて提案しましたが『決め』がないときがいちばん大変です。
紆余曲折を経て
①主人公キャラは中性的なイメージ
②ジョブNPC
これらの要素を導き出しました。NPCはファイター、ヒーラー、ビショップ、セイバー、ウィザードなど12種類。
全ジョブに魅力がほしいというオーダーがあり、全員がカブらないようにキャラクターに個性を与え、属性を図にしました」
<UIデザインについてのアイデア>
「UIパーツのアイコンを作っています。そもそもUIとは、ボタン、アイコンといったユーザーインターフェイスのこと。
UIは、存在するうえでふたつの要素があります。それは機能と意匠(デザイン)です。
例えばボタンなら、押して他の画面に遷移する機能があります。意匠(デザイン)という要素も必要ですね。
『ゲシュタルト・オーディン』では、菱形をモチーフにした意匠を作成しています。
試作を重ね、UIの意匠のテイストに統一感があるのか、機能として客観的に使えるのかを監修しました。ちなみに、実装はAimingです」
<3Dデザインとアイデア>
「武器はこのプロジェクトでは売り物なのですごく大事。魅力がないと買ってもらえません。
スマホ上の見映えも大事で、とにかくユーザーが欲しくなるものを作ることが必須。最高のレアリティなら、特別演出が求められます」
ちなみに、ゲームの舞台はパラレルワールドの「東京」と「東京」。
元の世界に戻るエネルギーを集めるために、「七つの大罪」というボスモンスターを倒すという設定。
「全体の雰囲気がコンセプトに合っているか?色やライトの雰囲気も細かく確認します」
<パブリシティデザインのアイデア>
「パブリシティデザインは幅広く、PR活動、広告、宣伝。WEBやティザーサイト、事前登録、ウェブ記事・広告、イベントやプロモーションを指します。
キャラ担当の僕にとって、いちばん大きな仕事はやはりポスター(メインビジュアル)です。僕はキャラが揃ったら作り始めていました。
仕事の合間に徐々に作成をしていきました。」
「ここでも大切なのは統一感をもって描くことです。シチュエーション構図を考え、ポーズを付け……
いちキャラクターでかなり時間がかかることもあります。背景も時間がかかりました」
<しかし!1年経たずにクローズ。課題点は?>
「振り返ってみると、制作途中で出てきた様々な要素により広告の統一感がなくなりユーザー認知が弱くなり、集客に苦戦しました。
また、運営中の商材(3D武器)が不足し、クローズに。ただし、個人的には得られるものもありました。
Aimingは最強パートナーだと感じましたし、メインポスターへのリアクションも良く、ゲーム紹介サイトでのメディア露出の際には、いいね!が100以上つきました。
しかし、『伝える』ことの難しさを感じましたね」
<では、アイデアの根底は……?>
「私の場合、日々のアイデア出しや練習は落書きです。電車の中でも描いています。ただし、怪しい目で見られるのでオススメしませんが……」
ちなみに、これまでに使ったラクガキ帳は計203冊!(2009年4月から2019年)16181枚、1日平均4.2枚にもおよびます。
プロといえども、たゆまぬ努力が大事ということですね。
<魅力を感じるゲームとは?>
「遊び、世界観、キャラクターが一体化していること。それが『新規性』『作品性』『中毒性』につながると思います。
1.魅力あるビジュアルを追求する
2.繰り返し遊べる体験があるからゲームをする
3.チーム内でコミュニケーションを取っていく
ことを忘れずに、傑作といわれるような作品を生み出し続けたいですね。
そして、皆さんが生み出したアイデアが世界を救わんことを願っています!」と締めくくりました。
最後は、学生たちからの質問タイム。
——— アイデアを出すためのオススメは?
「洋書のハードカバーをめちゃくちゃ買います。洋画、洋ゲーの本は参考になります。
あとは日々の落書きもそうですが、SNSでフォローしているグループなど、普段から必要な情報をスクラップしておきます」
——— ディベロッパー側とパブリッシャー側とで、ゲームへの携わり方に違いはありますか。
「今回は、コンセプトアートとビジュアルプロデュースがスクウェア・エニックス、制作がAimingと対等な関係でした。
一般的にはパブリッシャーが依頼や指示などを行い、ディベロッパーに作業を行ってもらうことが多いです。
——— キャラクターデザイナーとして長く仕事をしていくコツは?
「デザイナーはジェネラリストとスペシャリストに分かれます。各プロジェクトでの役割は違いますが、小回りがきいて動けるといいと思います」
——— デザインをするうえで重要視することは?
「客観的に見られること。入り込んでガーッと書いちゃうと伝わらないことも」
——— 学生に向けてアドバイスをお願いします!
「目標をしっかり持たないと疲れると思います。ゲーム会社で、例えばアイコンを3つ以上制作する、など具体的な目標を持つといいと思います。
そしてゲームもぜひ自主的に作ってください」と締めくくりました。
デザイナー志望の学生たちにとって、新しいアイデアが湧いてくるような、貴重な時間になったのではないでしょうか。